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目黒

わたしの心はまだ目黒から帰って来ない。
だからここにいるのは空っぽのわたしの器なんだと思う。





夏 休 み   お 盆   一 週 間 の 訪 れ





そりゃああそこだってここだって、見上げる空の青さも流れる雲の速さも変わりはしない。
だからこそわたしはまだ帰って来られない。
友達といても恋人といても、みんな決まったようにうわの空のわたしを見て溜息をつく。
仕方ない、わたしに目黒から帰ってこいというのは、彼女のあの弱った様を忘れろということだから。





介 護 ベ ッ ド   小 さ な 身 体   ひ と り き り の 家





前に会ったのはいつだっただろう、中学生だっただろうか。
目黒がスライドのように、フラッシュバック。

幼稚園のころは毎日のように行きたがって、小学校でも年1回じゃあ足りなくて、
中学校でなんだか照れくさくなって、高校のときは忙しくなって、そしてやっと今年。
街の景色がずいぶん変わるのも無理はない。





仏 壇 に は 若 か り し 彼   し わ だ ら け の 手   笑 顔





ただひとり、ベッドに横たわっていた彼女は、顔をくしゃくしゃにして笑った。

わたしの手はまだあのしわしわの手に握られたままでいる。

ricca / ミオ