見守る者

少女が一人立っている。
そこに確かにいる少女に
だれもが関心を持つことは無く
あまたの人にとって少女は存在しないように
そこに立つ銅像に寄り添うように
確かに少女はそこにあった。
つまらなそうに、それでいて慈しむように
少女は人々に目を向ける。

待ち合わせだろうか。
辺りを見回しては携帯に目を運ぶ女性。
ナンパであろうか周りの異性を物色するかのような男。
多くの人々がそれぞれの様相を見せ
それを見守る少女。

そこには出会いがあり
そして別れがあった。
人々の思いは
それぞれの色と形でそこに漂い留まる。
少女の目には色とりどりの泡が映り
その泡のダンスを優しく見守る。
善意も悪意も思いが揺れる。

「あなたはずっと見守るのね」

少女が呟く。

「人の思いを一身に受け、貴方は何を望むの」

少女は愛しげに銅像をなでる。
遥か昔に待つ者であった思い。
人々の思いを受け昇華した魂に――

優しい思いを少女は注ぐ。
辛い思いが楽になるように。
楽しい思いが膨らむように。
思い望み見守る者に。
優しさの思いの集いし者に。

遥か昔にまだ犬であった思いに
少女はそっと寄り添う。
ただ、思いの流れと共に。

夢工房夢月堂 / 姫新翔