Time is over

黒目がちな瞳、風にふわりと揺れる髪。
そして甘く響く優しい声。
亜弓は誰が見てもカワイイと認める部類の女の子だ。
カワイイからすぐ彼氏が出来るんだけれど、別れるのも早い。
それは彼女がちょっとだけ自己中心的なのと
相手よりも自分が可愛くてしょうがないようなところがあるからだと思う。

そんな彼女から「会えない?」って電話がかかってきたのが20分前。
そして今アタシは、彼女の指定した喫茶店についたところ。
窓から目白大学が見える、小さいけどオシャレな喫茶店。
学生らしき人がチラホラ座ってるのも頷ける。

遅かったねーと彼女が言う。
電車派のアタシと、タクシー派の彼女とでは
きっと時間の感覚が違うんだろう。

メニューからアイスティーを選んで注文した後
で、どうしたのよいきなり、と話を切り出すと
彼女は、これからデートなの、とにこやかに笑った。

え、それだけ?
何か相談があったとかじゃなくて?
「うん、彼の授業が終わるのを待ってる間ヒマだったから」
それだけ言うと彼女はチラリと時計を見て席を立った。
「来るの遅いんだもん、デートの時間になっちゃった。またね」

アタシは、というと
呆然と彼女の後姿を見送る事しか出来なかった。

stushy / 藤生アキラ