穏やかな午後

変わりたいと願ったのはいつからだったんだろう。

アタシはアタシじゃなくて

本来のアタシはこんなんじゃなくて

やりたい事も

たくさんの夢も

必死に追いかけて頑張って。



・・。

・・。

・・。



だからね。

今のアタシはアタシじゃなくて

本当のアタシはもっと違うの。



変身願望がある、と言われれば

それは間違いなくそうなんだろう。

小説家、という仕事を選んだのも

色んな人格に思いをリンクできるからだし。



変わりたいと思うことなんてきっと誰にでもあって。

だからなんだろう。

たまたまそういう日だったんだろう。

Suicaを片手に家を飛び出したのは

たまたまそういう日だっただけなんだ。



──JR山手線。

鮮やかな黄緑のラインが眩しい

人の溢れる東京の中でも

もっとも利用頻度の高いライン。

内回りと外回りに分かれて

東京主要箇所をぐるりと取り囲むように回るこのラインは

ドコが始発駅なのか

ドコが終着駅なのか

本当の所は

きっと誰にも分からない。



アタシの家から一番近い大崎駅。

ここが出発点だと言い張る人も多いけど

それが真実であろうが

真っ赤な大嘘であろうが

そんな事は気にもしてないかのように

今日も山手線は回り続ける。



──あ、電車が来た。


イッパシの都内に住んでるクセに

山手線はかなりの頻度で利用するクセに

そういえばアタシはまだ

全部の駅で降りた事がない。



ホラね。

今日はそういう日なんだ。

最初からきっと仕組まれてたんだ。



全ての駅を制覇した後は

きっと違う自分になれるはず。

ヒトツヒトツの駅に降りて

ヒトリヒトリの小さな声に耳を傾けて



そこから湧き出た文章を

家に帰ってからまとめよう。

07 / NANA