駅の間の憂鬱

ここどこ?
駅を降りてみると目の前にデパートと呼べるのかなんだか
分からないようなビルが並んでいる。

とりあえず、待ち合わせの場所についたことを友達に連絡すべく
携帯をカバンから取り出した。

トゥルルルルルちょっとの間コールを鳴らして友達が電話が取る
「もしもし。」
「ついたよ。」
「え?どこにいるの?」
「駅のまん前にいるよ。近くに交番がある。」
「近くに交番なんてないよ。あんたいったいどこにいるのよ。」
「いや、JR本八幡駅なんだけど。」
「はぁ?」
「え?なになんか問題?」
「京成本八幡駅だって言ったでしょ。何度も確認したじゃない。」
「え?そんなこといわれても・・・」

まだ日がのぼって間もないのに日差しは強い。
暑くて汗がシャツににじんできているのが分かる。
待ち合わせ場所を間違えたことに気づいて、さらに汗が出てきている。

「あぁ。どうすればいい?」
「もう時間がないから急いでこっちにおいでよ。」
「こっちっていってもそっちがどっちなんだかわかんないよ。」
「言ってる意味がわかんないよ。交番あるんでしょ。交番にいって聞きなよ。」
そう友達は言い放って電話がガチャリと切れる。

私は途方にくれながらも回れ右をして重いスーツケースをガラガラと
おして交番に向かった。
「すみませーん。」
交番の中にいる2人の警官の視線があたしに向けられる。
別に悪いことをしているわけじゃないけれどもなんだかおどおどした調子で
「すみません。京成本八幡駅ってどこにあるんですか?」
「あぁ。ここの道まっすぐ行ったら線路があるからそこらへんだよ。」
いい加減な教え方だなぁと思いながらお礼を言おうとすると
「荷物重いんだったらタクシーでいったほうがいいんじゃない?」と助言してくれる。
でも、これから旅行なのに1円たりとも日本でなんか無駄遣いしたくない。
なんだ意固地にそんなことを考えてしまった私は
スーツケースをガラガラと押しながらずっと同じような商店街が続く
駅前の道を歩いていくことにした。

ガラガラガラガラガラガラガラガラガ

50mも歩いていないうちになんだか不安になり
ほんとにつくんだろうか、友達においていかれたらどうしよう。
飛行機に乗れなかったらどうしようなんて逡巡しはじめてしまった。

ガラガラガラガラガーーーーラ


はぁ。もう飽きたなぁ。
なんでおんなじ駅名なのにこんなに遠いのよ。と
ぶつぶつ言いながらまたスーツケースを押す。

ガラガラガラガラガラガラガラガラ

着メロがなる。
電話を取る。
「もしもし?まだ?はやくこないの?」矢継ぎ早に話す友達。
「あぁ。いま歩いてるよ。」
「はぁ?さっさとタクシーに乗って来い。」
「えぇ。すぐだって警察の人にいわれたんだけど。」
「つべこべ言わずにタクシーに乗って来い!」
「わかった。」

またスーツケースをガラガラと押しながらちらちら道路の方をながめてみるが
こういうときに限って空車のタクシーは来ない。
しかも、駅前の通りを私は直進しているので、
タクシーはもちろん駅でお客さんを乗せてきてしまう。
私のいる位置にタクシーが来るときには、空車になっているわけがない。

戻ってタクシーに乗るべきか・・それともこのまま歩き続けるべきか・・・

途方にくれながらも、後ろにもどるにゃ女がすたると思い
ガラガラガラガラガラガラとスーツケースを引っ張り始める。
ガラガラガラガラガラガラガラガラ
ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ

また、電話が鳴る。
「まだ?」
「うーん。もうちょっとだと思うんだけど。」
「もう電車くるからのっちゃっていい?」
わたしは、もうなんだかあきらめてしまい。
「あぁ。いいよー。後で追いつくから。」と突き放したようにいって
電話を切った。

あーこんちくしょー。
同じ本八幡駅なのになんでこんなに遠いんだよ!
無性にむかつき、旅行のためにお小遣いは少しでも残しておきたいなんて
気持ちはどこかに吹っ飛んでしまった・・・

たまたま、後ろから来た空車のタクシーに手をあげて
乗り込んだ。

「おじさん!成田空港まで!いそいでください!」
「あいよ!」とのりのりで腕まくりをしたタクシーの運転手さんをみて
ちょっと元気が出た。
あんなに薄情な友達だけどしかたがねー許してやろうかなって気になった。



結局、京成本八幡の駅なんてどこにあるかわかんなかったし
電車で来た友人よりまえに待ち合わせんじは着いた。

ぽわり / うり