...birth...

誕生日のデートは基本よね。

前日の夕方に、いつもの駅で待ち合わせをしてたのだけど
先に着いてヒマだったんだろう、ゲーセンで座ってゲームをしていた。
勿論、先に着くのは判ってたし、そこに居るだろうことも想像ついた。

探す必要なんて、ない。
...そこに引き寄せられるように。

私は、静かに斜め後ろに立った。

「もう少し待っていてくれ」
背中を向けたまま、声の方向は画面へだったけれど。
確かに、私に声を掛けてくれた。

「待たせてしまって、ゴメンナサイ」
「いや、大丈夫...。終わった、行こうか」

その後、ワンコインでこんなに遊べたのだ、とか
対戦相手が強かった弱かったと楽しそうに話していた。
そうやって楽しそうに話してる姿を見ているのが好きなのだ。


 今日の、この日を...一緒に過ごせて嬉しく思うよ。


たくさんの人が行き来する商店街を腕を組んで歩く。
躓いてしまいそうになったりする度に支えてくれる。
「大丈夫か?」と、気にかけてくれる。
そんな...優しさにも私は惹かれたんだなぁ...なんて思う。

美味しい食事をして...ホテルに足を運んで抱かれた。
誕生日プレゼントは数日前に自宅に届けてくれた。
大きすぎて、デートに持ってくるには邪魔だったから。
今日のデートもプレゼントだと先週、言ってくれたよね。

 ありがとう、とても幸せだよ。

出会って...一緒に過ごす、初めての誕生日だった。
出会った記念日は私の誕生日の1ヶ月あとだから、
来月も一緒にお祝いしよう。

長針と短針がぴったりと重なる...
日付が私の誕生日に変わる瞬間も、そばに居られた。
肌を重ねて、ぬくもりを感じていた。


「おめでとう、---」

 耳打ちなんて、卑怯だわ。

「もっと、聞きたい...」

「お願い...」



 何度でも、聞いていたいよ。大好きな、アナタの「...」。



チェックアウトして、街にくり出す。
新しい一年が今日からはじまる...今日の私はワクワクしてる。
その最初の一歩を...最初の一日を...
大好きな人と過ごせることが出来ることに...「ありがとう」


電車でお互い帰っても良かったんだけど、同じ方向の電車に乗る。
車で自宅まで送ってくれるって言ってくれたから甘えてしまおうw

 少しでも、長く一緒にいたいから。

助手席に座るのはこの車に乗るときくらいだったから
車でどこかに行ったり送ってもらうのがたまらなく幸せだった。
何度目だろうか、この車で自宅への道のりを行くのは...
そうして、誕生日のこの日も私は助手席に座った。

「私ね...夕方に産まれたんだって。」

「そうなのか。何時くらい?」

オーディオから、ドライブにはこれがいいんだと
楽しそうに選んでくれた音楽が流れていた。

隣りで前を見つづけるアナタと、車の時計を交互に見る。
時間が少しずつ近づくのが判る。

3分前...2分前...1分前...

時計を見すぎて気付かず、何時の間にか道路脇に止まっていた車。

時間がちょうどを指し示した瞬間、視界が消えた。

「...」

唇に温もりを感じて...そして、目の前には笑顔のアナタが。

「Happy ...」

その笑顔につられたのか、私も一緒に笑っていた。






...fin...

I.N. My Room / 枷夜