長崎

会社帰りに、スーパーマーケットに行って
重い足を引きずりながら、両手に重いビニールの袋をかけて家に帰る。
そんな毎日だった。両手にビニール袋を提げて毎日泣きながら家に帰った。

家に居るのが嫌だった。自分のうちで夜を越えるのが嫌で、家に居なくてもいい仕事をしようと思った。
旅の毎日だった。たまに自分のウチに泊まった。
今日は紫の町で夜を越える。
いつもの仕事のかばんに、いつもは入れない私服を入れて出かけた。

仕事が終わって私服に着替えて・・・そうして、ホテルを出た。
100円握って路面電車に乗った。あるはずで、見えない海を遠くに見た。

自分のうちよりずいぶんと南で、海を越えてきたこの街もやっぱり冬で
紫が暖かい季節に来たときよりも深く冷たく澄んで見えた。
あたしはこの町の人じゃない。旅人は気楽だ。それも1人がいい。
誰のことも気にすることもなく、私のことも誰も気にしない。

電車を下りて、ふらふらと歩いていったその場所は赤かった。
ひりひりするような空気の中で、その灯りたちはほんわりと暖かく街をつつんでいた。
極彩色の門を包む 赤いランタンたち。

そのはずれの汚いカウンターの餃子屋で、おじさんたちに挟まれて
餃子と熱燗頼み、何となくついているテレビを眺めながら酒を飲んだ。
熱燗はもてないほど熱くて、餃子をはふはふしながら食べた。

そうして、また100円の路面電車に乗って
ベッドとスタンドしかないホテルに戻り、シャワーも浴びずに裸で眠りについた。
また明日から黒いスーツで旅の日々。
名前だけの私。苗字はまだ決まらない。

誰かのモノ / くればやし みかん