岡山

確か、初めてひとりで新幹線に乗ったのがその時。
その前に乗ったのは中学校の時。ディズニーランドに行ったんだ。
でもそれは修学旅行だったから、友達がいっぱいいたし、何より先生がいた。
だから不安なんてなかったんだ。

恥ずかしいけれど、19にして初めてひとりで新幹線に乗った私。
ひとりで遠出をするのも初めてだった。
だから情けないことに不安でたまらなくて、
だけど不安要素はそれだけではなくて。


「一緒に年越すか?」

まさかまさか、そんな事を言ってくれるとは思ってなかった。
だってつい1週間前に、「車が廃車になったからもう別れよう」とか、
ワケのワカラン事言われて別れの危機だったのに。
その時の私が犬だったら、きっとしっぽをぶんぶん振って喜んでいたに違いない。
本当に本当に、心から嬉しくてさっそく準備をし始めた。

悩みに悩みまくって、荷造りをした。(一番悩んだのが下着だった。)
新幹線のチケットもちゃんと取った。
トイレに行きたくなった時にスッと立てるように通路側の席にした。
親には「年越し飲み会に行ってくる」とかなんとかテキトーな言い訳をしといた。
ボディケアもカンペキにした。
前の日はワクワクして眠れなくて、結局30分くらいしか寝れなかった。


たくさんの思いを抱えて、私は新幹線の中にいる。
きっとこの先、何度もこの新幹線に乗って、あの駅で降りるのだろう。


そう、すごく、不安で、楽しくて、幸せだった。




あれから、4回目の年越し。

もう私は、新幹線には乗らない。
あの駅では降りない。
あの人は隣にいない。


だから、もう、あの駅では降りない。
もう、あそこには行けない。

サヨナラ、ばいばい。あなた、と、岡山。

桜アコ