福島

土曜日の八王子。

北口はいつものように人でいっぱいだった。

いつものように遅れて来る彼。

壁にもたれながら待つのもいつもの事。




「ごめんね」

そう言って現れた彼と八王子の街を歩く。

「どこに入ろうか?」

ぶらぶらと、居酒屋の前を何軒か過ぎた。

「ここにしようか?」

和風の居酒屋の前で足をとめる。

店員さんに案内されてカウンター席についてビールを頼む。



「お疲れ様」

そう言ってグラスをカチンと言わせ小さな乾杯をする。

一口飲んで「美味しいね」っと私は言う。

一緒に居られる事が幸せだと思う瞬間だった。



しばらくするといつものように小さな頃の事を話し出す彼。

その時の色んな笑顔が故郷への想いを感じさせる。



池でフナ釣りをして遊んだ事。

田植え前の田んぼで泥んこ遊びをした事。

幼稚園のお泊り保育でおねしょをした事。

ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんが大好きだった事。

学校が大嫌いだった事。

やんちゃ坊主で悪巧みをしては先生に怒られていた事。



彼の話を聞いていると、古ぼけた写真のような風景が心に広がる。

色あせた写真のような風景。

心はそんな風に彼の故郷を作り出す。



心が作り出す風景の真ん中で小さな男の子とがとびっきりの笑顔で笑ってる。

それが私にとっての彼の故郷の風景。

one / sayaka