宮城

テレビを見ながら、母は枝豆を食べていた。私からは、テレビの画面は見えない。ただ明るくちかちかとするテレビの光に、母と、枝豆が照らされているのだった。不意に、母が口を開いた。目は光る画面へと向いたまま、だが画面を見ているわけではない。
「…やっぱり、宮城に来なければね…」
「うん、そうだね。」
私は、頷いた。他に返答のしようはなく、また、私も常々そう思っていたからだ。
父が強引に――母と私にとっては強引に、故郷の宮城へと連れてこられた。母はいい顔はしなかったものの、それほど反発する性格ではなかった。私も、そのようなことが分からないほど幼い頃のことだった。性格も、母に似たのかもしれない。普通にここで暮らして、年を重ねて。県外へ出ることなんて、考えることすら躊躇っていた。
「そうだね。」
枝豆は、近所の農家の方が取れたばかりのものを届けてくれたのだ。すぐに茹でたため、甘さと香りは市販のものとは比べようがない。その味は、この家にいるからこそ味わえるものだ。
結局のところ、すでに、ここに根を下ろしてしまっていた。これだけ住んでいれば、知り合いも多くなる。ようやく、県外へ出ようかな、などと思い始めると、友人に引き止められた。
不満はある。くだらない不満から、誰もが溜息をつくのではないかという不満まで。人の欲は、どうにも止まらないらしい。
ただ、枝豆へとまた手は伸びる。
「美味しいね。」
「そうね。今度、お礼しないと。」
また貰ったなら、今度はすり潰して餡にしようか。そんなことを考えながら、私は皿に残っていた枝豆を横取りした。

土の双唇 / 宙人