なんとなく彼女と散歩していた時に、見つけたうらぶれた骨董品屋。
そこは、埃臭くくすんだ匂いがした。
僕は、引っ越したばかりで家具がほとんどない部屋でもうかれこれ3ヶ月も暮らしていた。
その骨董屋には、その骨董屋らしい家具が並んでおり全体的に陰気臭い雰囲気を醸し出していた。

ぶらりと店内を一周していると店の奥のほうにその骨董屋のこまごまとした商品とはちがいどっしりとしたベッドが置いてあった。

僕は彼女に耳打ちをする。
「このベッドよくない?」
「そう?」と
近くにあったこれまた古い時計に触れながら彼女は気のない返事をする。
「うん。すげーいいよ。」
「でも、こんな店にあるベッドなんて気持ち悪くない?誰が使っていたか分からないベッドだし。」
「でも、すげー気になるよ。」
「やめときなよ。新品な綺麗なベッド買えばいいじゃない。」
「うーーーーん。」
すると、どこからともなくその骨董屋の主人が現れた。
「お気に召しましたか?」
「はぁ。まぁ。」
「このベッドはかなりの値打ち品ですけれどもね・・何故か売れなくて。こんな店においてあるからいけないのかもしれないですけれどもね。」
主人は自嘲気味に笑った。
「おいくらぐらいなんですか?」
僕は、このベッドを相当気に入っていたので値段が買える範疇であればと思って聞いてみた。
「5万で値をつけてますが、全然、売れませんし・・もう少し勉強できると思いますよ。」
「じゃ、3万ぐらいでどうでしょう?」
「2万も安くですか。」
苦笑気味の主人だがまんざら悪い顔ではない。
「まぁ、ここにおいてあっても場所をとるだけですしね。その値段ならかまいませんよ。」

彼女は、僕のシャツの袖を引っ張り耳打ちする。
「ホントに買うの?なんか気持ち悪いよ。」
「3万だったらちょうどいいし・・もう堅い布団で寝るのも疲れたしな。」

「じゃ、このベッドください。」

僕は、あまり即決で物を買うほうではなかったけれどもこのベッドに関しては絶対に欲しいと思って買ってしまった。
その後、主人と宅配の手続きやらなんやらをして僕はその重量感のある黒い木のしたベッドを手に入れた。

そうして1週間たって部屋にベッドが届いた。
がらんとした僕の部屋にやけに重量感のあるベッドがずどんと居座るようになった。

彼女は、ベッドが届いたと連絡すると僕の部屋にベッドの見学にやってきた。
「なんだか、随分部屋に似つかわしくないわね。」
新品のマットをひいたベッドに乗っかってぽんぽん上に飛び跳ねた。

その夜、
僕は、僕がベッドに寝ている夢を見た。
それは、とても不思議な感覚だった。
自分の寝顔を見るのは初めてだった。

ベッドは僕が考えていたように寝心地がよく僕の体にはしっくりあった。
寝ているとまるでベッドに吸いつけられるような感覚がして
それはとても心地よいものだった。

仕事から帰ると僕は、すぐベッドに横になるようになった。
寝ることが心地よく。ベッドと一体になるような感覚。
僕は、自分が無機物になったような感覚を味わい。
自分が外に解放され自由になったように思った。

僕は、僕がベッドに寝ている夢を見続ける。
ベッドに寝ている僕には、ベッドから生えている蔦に絡まっていた。

僕は、僕がベッドに寝ている夢を見続ける。
ベッドに寝ている僕は、ベッドから生えている蔦に絡みとられていた。
外にいる僕は自由に飛びまわれる
何もかもから解放されている。

僕は、僕がベッドに寝ている夢を見続ける。
ベッドに寝ている僕は、僕じゃなくなった。







達也と連絡が取れなくなった。
携帯に電話をかけても出ない。
部屋に電話をかけても一向に出る気配がない。
由紀は、心配になりマンションの一室に向かう。
管理人に
「親類の者ですが、連絡がとれなくて心配している。」と泣きながら訴えたら
部屋をあけてくれた。

部屋の中は、やっぱりがらんどうでベッドだけが真ん中に一つ。

ぽわり / うり