コタツ

柔らかい毛布の感触を頬で感じながら、ぼうっと瞳を開けた。
その先にあるのが『何か』っとゆう事に気づくまでに少し時間を必要とした。
そして、それを認識してしまう前に起き上がり、タバコに火をつける。
これはもう毎日の朝の日課になってしまった。

あの日から・・・

あの虫の声が五月蝿かった夜からベットで眠る事を拒否していた。
その感触や、ベットに染み付いた匂いから記憶が呼び起こされる事を恐れていた。
時間がゆっくりと過ぎている今もまだベットで眠る事ができないでいる。



あれから私はいつかあいつが包まっていた毛布をコタツに引っ張り込んで眠っている。



『コタツってさ、魔力があるよね』
家にコタツがあるとゆう話をした時に、華がそう言った。
寒いからコタツから出るのが億劫になって、手に届く範囲に必要な物を置いて。
布団に移動するのが億劫になってコタツで寝ちゃって。
『コタツムリになるよね』
確かにっと首を立てに振った。



あいつが居なくなってから私はコタツムリになった。



『もうすぐ春になって暖かくなるからコタツ、しまわないとね』
桜がそろそろ咲き始めるのかなぁ?っと言った私に華がそう言った。
見つめた華の瞳が少し飽きれたように微笑んでいた。
『もうそろそろコタツも想いもしまってしまいなよ』
見透かされた想いにぽろぽろと涙が零れた。



春晴れの日曜日。



ずっと使っていなかったベットは湿気くさかった。
ずっと使っていたコタツはぐちゃぐちゃで、お茶の染みが出来ていた。
コタツ布団をクローゼットにしまって、狭いベランダに布団を干した。
カーテンを開けて窓を開け放つと、春の風と春の日差しが入ってきた。
あいつが駅に向かって行く後姿を何度も見送った窓から空を見上げた。
またいつか誰かの隣で優しく微笑む事が出来るだろうか。
あいつは誰かの隣で優しく微笑む事が出来るだろうか。



向かいの家の庭先に咲き誇った桜の花びらが風に舞い上がった。



拒否し続けていたベットに身体を預けると、想ったよりも気持ちが良かった。
案外、今はもう平気なのかもしれないっと少しだけ想った。
微かに残る匂いは胸をいっぱいにしたけれど、いつかそれも消えて無くなってしまうだろう。
そんな事を想いながらいつの間にか眠ってしまっていた間に見た夢は、いつかあいつと一緒にコタツに入ってテレビを見た時の情景に似ていた。
あいつが後ろから私を抱っこしてテレビを見ていた、何でもないいつかの夜の夢。



『ねぇ?好き?』

『好きだよ』



照れたようにニッコリ微笑んだのはいつかの私。

one / sayaka