かみさまとにんげんの島で
それはまだ、セカイがひとつの島で
かみさまとにんげんがともに暮らしていたころのおはなし。
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そのころのセカイでは
かみさまはトクベツな存在ではなく
にんげんもまたトクベツな存在ではなくて
役目が違っていただけ。
かみさまはイノチの始まりと終わりを祝福し
にんげんはイノチを全うする。
かみさまはイノチあるものを生み、滅す。
にんげんはイノチなきものを造り、壊す。
それがそれぞれに与えられた役目。
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セカイに薄紅色の花が咲き誇ったころ
かみさまはひとりのにんげんのもとへとやってきた。
始まりを祝福するために。
太陽の優しい朝。
ひとつのイノチが始まりを迎えた。
「いらっしゃい、よろしくね。」
朝日に薄紅色の影が揺れていた。
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セカイの空が青く高く突き抜けるころ
にんげんはかみさまのために社を建てた。
自らのイノチに感謝するために。
雲ひとつない朝。
かみさまは照れながら社に入った。
「・・・・・」
「・・・・あ」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ありがとう。」
朝一番の風が社を通り抜けた。
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セカイの木々が山吹色に染まるころ
かみさまはにんげんのために種をまいた。
社のお礼に感謝をこめて。
よりいっそう色付きを増したセカイ。
祝福を受けた種は広がった。
「眠り終わったら、出ておいで。」
色付いた木々が落葉の布団をかけた。
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星々の光が際立つころ
ひとりのにんげんがかみさまのもとへとやってきた。
終わりの祝福を頼みに。
月のきれいな夜。
ひとつのイノチが終わりを迎えた。
「生まれかわり、また会えますように。」
水面の月に星々の橋がかけられた。
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いつもより多くの薄紅色の花が咲き誇ったころ
眠りからさめた種から聞こえるイノチの声。
かみさまもにんげんも見守った。
「がんばれー」
何度目かの空が青く高く突き抜けるころ
かみさまは社の中であつさをしのぎ
にんげんは木々の木陰であつさをしのいだ。
「・・・・ふぅ」
いつかの木々が山吹色に染まるころ
にんげんは木々からとれた果実をかみさまに。
かみさまはそれをみんなに振舞った。
「ありがとう。」
と
「ありがとう。」
「・・・・・」
「・・・・あ」
「・・・・・」
「・・・・・」
「甘くておいしいね。」
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