私を愛さない貴方ともがく私と

愛すること、愛されること。
似ているようで、一致することはめったにない。

家族に対する愛情なら、互いに愛し、愛されていることも多いね。
私の場合、家庭が不安定だったから人よりもそれが薄いけど。
友達の場合、友情を愛情といえるのなら、私は愛してる。
友人達に愛されてるとも思ってる。
正確には判らないけど、多分相思相愛だと言えるんじゃないかな。
数で勝負はしないから、愛し、愛されてるな、
と自覚することは、とっても少ないけれど。
愛されてるのは、救い。
愛されてるのは、喜び。

なのに、恋愛の場合、愛されないのは絶望。
そして、愛し、愛されることが一致するのは、困難。

結局、愛情ってどこからどこまでを言うのだろう。
ただ単に、興味を持った時点が「気になる存在」で、
少し、良い部分を見つけたら「すき」で、
全てを受け入れる準備が出来たら「愛してる」と、
変化すると、私は勝手に考えている。

私は「愛し」たら私の存在全てを賭けて、その人を包む。
私の愛は、命に匹敵する。
だから、「愛されない」ことは、私の死を意味する。
精神の崩壊。
自己否定。
死、滅亡、虚無、全てがなくなる。
そんな時期があった。
大げさだ、と笑う人もいるだろう。
重い、と非難する人もいるだろう。
でも、そんな「愛し」方しか、私は知らなかった。
だから、容易には「愛してる」とは言えなかったの。

それ故に、私の過去の「愛」情は未だに私を蝕む。
何故、「愛されなかった」のに生きていたのか。
一方通行の「愛」を何故抱えて生きていられたのか。
私は今でもそれを考える。
「愛してる」人に「愛されなかった」私など、無意味だったのに。
どうして生きていたんだろう。
全身全霊を賭けて、「愛した」のに。
闇の中で絶望して、胸をかきむしっていたのに。

そうして、ふと考える。
最初に言ったこと。恋愛ではない、ほかの人の愛情が
私を支えてくれていたこと。
ただ一人の男に「愛し」「愛されなかった」からといって、
貴方を「愛してる」私たちを忘れないで、
と、口ではなくて態度で、示してくれた優しい人たち。
私は、ひとりじゃなかった。

「こんなに愛してるのに」というのは、とっても傲慢なことだ。
だからって私を「愛して」というのは、違うんだ。
悲しいことだけど。
どれだけ相手を「愛して」いても、相手の「愛」は縛れない。
縛った時点で、それは「愛情」じゃなくて、
ただの「束縛」になってしまうの。
私は、その人全てを「愛してる」からこそ、「束縛」はしたくなかった。
私の、思い通りのひとを欲しかった訳じゃなくて、
その人が、その人だったから、「愛して」いたから。
だから、「愛して」いたけど、心がちぎれてしまったけど、
泣けなくても、泣けなくて、苦しくて、切なくて、
狂ってしまいたかったけど、別れを告げた。
ちっとも、自分のこころは離れて居ない癖に。
その人の心を自由にしてあげた。

ねぇ、自由な心で、私から飛び去っていった貴方。
今、しあわせですか。
愛し、愛される人を見つけてくださいましたか。
とっても、とっても、癪ですけれど。
自分が、貴方にとって、そういう存在になれなかったから、
とってもとっても、憎らしくて、滅茶苦茶にしてやりたいけれど。
私のこの「愛」情を、無駄にしないで下さい。
貴方にとっては、何の価値もない、私の「愛」かもしれませんけれど。

私にとって、貴方は、私の全てでした。
ほかには何もいりませんでした。
貴方さえ、愛してくれたら、私はしあわせでした。
貴方のしあわせは、私が一番望んでいることであり、
そして、苦痛でもあり、
今では貴方のすべてが、私のこころを刺すのです。
思い出も、私のこの愛していたこころも、
僕が存在している限り、いつまでも、私を刺すのです。
時に、それはちくりちくりと。
時に、それはざくりざくりと。
鮮やかな鮮血を、いつまでも私のこころに残すのです。
何度でも何度でも、暗黒に私を突き落とすのです。
どす黒い心で、私は貴方を思います。
どうしたら、貴方を忘れられるのでしょう。
どうしたら、なくすことが出来るでしょう。

でも、貴方に会えなかった自分を考えてみて、
それもそれで不幸のような気がして、
私は、立ち止まったまま、黒い血だまりを作って貴方を思うのです。
愛して、愛されることのなかった私のこころ。
だけど、違う誰かに、確かに愛されている私のこころ。
私はこのまま、貴方をずるずる引きずって、
癒えない傷を抱き締めて、
やっぱり貴方を忘れられずに、歩いていくのだと思うのです。
時には貴方を思いだし、貴方を愛する私に戻っても、
誰かが私を愛して、私もその人を愛される時が来ることを信じて、
生きてみようと思います。
私は今、愛することに傷ついて、臆病になっているけれど、
きっとそんな日がくることを信じて、

だけど、貴方の隙間は埋められないまま。
黒い絶望だけを抱えて、
生きて行くのだと思います。

monochrome / tomoakira