ただ限りなく白く

ボクはソコに立っていた
悲しげな灰色に包まれた場所に
命の宿ることのない灰色の狭間に
瞳を閉じれば優しく微笑む顔が浮かぶ
生まれてからずっと一緒だった顔が
違う出会いがしたかった
なぜ君でなくてはならなかったのだろう
なぜ君を見てしまったのだろう
冷えた外気に身を竦ませ
ボクの心は悲鳴をあげる
灰色の狭間にボクは蹲り
救いを求めるように空を仰ぐ
空には踊る白き妖精
儚いほどに美しい揺らめく妖精
ひらひらと舞踊る
この醜い世界を染めておくれ
ボクのこの思いと共に
穢れ無き皓々たる色に
声では無く思いが
吸い込まれるように空へと昇る
咎人たるボクの思いが空へと昇る
許しなどいらない
ボクの思いなどいらない
唯々あの子の顔が
優しい笑顔に包まれるように
白く美しくいられるように
ボクのこの思いをその白で埋めてくれ
狂おしいこの灰色の思いを
見上げるボクの瞳の下に
白き妖精は舞い降り
ボクを許すように
ボクの代わりであるかのように
そっと優しい涙に変わる

夢工房夢月堂 / 姫新翔